聖堂案内シリーズその4


世界平和記念聖堂の正面扉(中央)その1
中央扉
十字架

解  説
 世界平和記念聖堂の正面には三つの鉄の扉があります。
  真ん中の扉の裏には、
     平和への門は隣人愛である
     デュッセルドルフ市より廣島市へ
     昭和29年(1954年)
  と刻まれています。
  原爆投下によって廃墟となってから9年後に、世界平和記念聖堂が献堂されたのは外国人の人々の祈りと援助なしには不可能だったことを忘れてはいけません。特に、日本と同じように戦争の悲惨さを経験し、復興途上にあったドイツから多くのものが寄贈されたことを記憶に留めておきたいものです。自らも苦しみながら、苦しみの中にある兄弟に手をさしのべる、まさに「隣人愛」のプレゼントです。
  そして、扉に刻まれた銘文で重要なことは、デュッセルドルフ市から廣島市へというメッセージです。一つの都市からもう一つの都市へ、JHS市民から市民へ寄贈されたことをもう少し意識してもよいのかもしれません。世界平和記念聖堂が、平和を願う人々により解放された、より開かれた聖堂となるよう努力することが大切です。
 中央の扉のレリーフの下段には、十字架、釘に打たれた傷のついた両手・両足・いばらの冠・四つの生き物が見えます。
  十字架の中央にJHSと記されています。JHSはギリシャ語「イエス」の最初の三文字、あるいはJESUS HOMINUM SALVATOR(人類の救い主なるイエス)というラテン語の省略型です。

  四つの生き物は新約聖書の「ヨハネの黙示録」に由来するものです。

「この玉座の中央とその周りに四つの生き物がいたが、前にも後ろにも一面に目があった。第一の生き物は獅子のようであり、第二の生き物は若い雄牛のようで、第三の生き物は人間のような顔を持ち、第四の生き物は空を飛ぶ鷲のようであった。」
(ヨハネの黙示録4章6−7節)

 四つの生き物は、「玉座の上に座っている方」を礼拝していますが、扉のレリーフは、「玉座の上に座っている方」が十字架につけられたイエスであると告げています。黄金に輝く王冠ではなく、いばらの冠をかぶせられ、十字架に釘づけにされたイエスこそ真実の「救い主」であることを示しています。

 「彼が刺し貫かれたのは私たちの背きのためでありかれが打ち砕かれたのはわたしたちの咎のためであった。彼の受けた懲らしめによってわたしたちはいやされた。」
(イザヤ書53章5節)

 「友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない。」(ヨハネによる福音書15章13節)と語り、十字架の死によって「隣人愛」を実践されたイエスは、「平和への門」を開いてくださったのです。
 四つの生き物は、新約聖書の四つの福音書、マタイ(人間のような顔を持つ生き物)、マルコ(獅子のような生き物)、ルカ(若い雄牛のような生き物)、ヨハネ(鷲のような生き物)のシンボルとされています。

獅子 鷲
人間 雄牛

 



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