聖堂案内シリーズその5


世界平和記念聖堂の正面扉(中央)その2







解  説
世界平和記念聖堂正面の扉の最上部には、翼をひろげた鳩のシンボルがあります。鳩は「聖霊」のシンボルです。

「そのころ、イエスはガリラヤのナザレから来て、ヨルダン川でヨハネから洗礼を受けられた。水の中から上がるとすぐ、天が裂けて”霊”が鳩のように御自身に降ってくるのを、ご覧になった。」(マルコによる福音書1章9−10節)

「聖霊」は、すべての生き物にいのちを与える神の息吹です。

「あなたが息吹きを取り上げられれば
 彼らは息絶え元の塵に帰る。
 あなたは御自分の息を送って彼らを創造し
 地の面を新たにされる。」
(詩篇104:29−30)

人間が造った一発の原子爆弾の投下によって、一瞬のうちに廃墟となった広島の町にとって、「地の面を新たにする聖霊」の働きへの信頼は、再生へ向かっての大きな希望のメッセージです。

「これらの骨に向かって、主なる神はこう言われる。見よ、わたしはお前たちの中に霊を吹き込む。するとお前たちは生き返る。」
(エゼキエル書37章5節)

枯れた骨を生き返させる「聖霊」の力は、原爆の犠牲となった人々にとっても、彼らの永遠の安息を祈る人々にとっても、大きな慰めのメッセージです。

「炎のような舌」が鳩から降り注いでいます。「聖霊降臨」の場面を想像させます。

「炎のような舌が分かれ分かれに現れ、一人一人の上にとどまった。すると、一同は聖霊に満たされ、“霊”が語らせるままに、ほかの国々の言葉で話しだした。」
(使徒言行録1章3−4節)

「炎のような舌」としての聖霊が弟子たちの上に降り、ほかの国々の言葉を語る恵みが与えられました。
群衆は、「自分の故郷の言葉が話されるのを聞いた」のです。
 これは「バベルの塔」によって混乱させられた言葉の再統合であり、新たな共同体の成立を示唆するといわれています。
 創世記11章は、人類が「天まで届く塔のある町を建て」自らの力を誇示しようとする計画を、神が言葉を混乱させることによって妨害し、統一が失われたというエピソードを伝えています。

「炎のような舌」は「12」あります。イエス・キリストの12人の弟子の上に降ったのです。
 12人の弟子は、神の民を構成する太祖ヤコブの子孫に由来するイスラエルの12部族に対応し、「新しい神の民」を象徴しています。

「鳩」と「舌」の構図は、「新しい創造」と「新しい神の民の誕生」を告げています。



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