聖堂案内シリーズその8


欄間彫刻(Part2)


*彫刻2は「洗礼の秘跡」、彫刻3「堅信の秘跡」

解  説
彫刻は七つあり、テーマは「七つの秘跡」です。

「七つの秘跡は三つのグループに分類されます。
第一のグループは洗礼、堅信、聖体であり、「入信の秘跡」とも呼ばれています。なぜなら、これらの秘跡は、信仰生活に入っていくために受けなければならない秘跡であるからです。すなわち人は洗礼によって神の子とされる聖霊を受けて教会の一員となり、堅信によってキリストの使徒として強められ、聖体によってキリストのいのちにあずかり、三位一体の神との深い交わりへと導かれます。
第二のグループは、「いやしをもたらす秘跡」で、ゆるしの秘跡と病者の塗油がこれに当たります。ゆるしの秘跡は受洗のとき以来犯した罪をゆるします。そして病者の塗油は、病気によって危険な状態にある人を助け、励ます恵みをもたらします。
第三のグループは「共同体への奉仕を目的とする秘跡」であり、叙階の秘跡と結婚の秘跡がこれに含まれます。叙階は役務としてキリストの祭司の務めを行う司教、司祭、および教会共同体の奉仕を行う助祭に任ずる秘跡です。また結婚も男女が夫婦として互いに仕え合い、社会や教会の土台となる家庭を築いていく恵みを与える秘跡です。」
(「カトリック教会の教え」(カトリック中央協議会)p.175から)


彫刻2「洗礼の秘跡」

 手、ノアの箱舟と洪水、虹、星が彫られています。

 「手」は、全能の神の力強い救いの働きを示しています。

   主よ、あなたの右の手は力によって輝く
   主よ、あなたの右の手は敵を打ち砕く
        (出エジプト記15・6)
   激しく攻められて倒れそうになったわたしを
   主は助けてくださった
   主はわたしの砦、わたしの歌
   主はわたしの救いとなってくださった
   御救いを喜び歌う声が主に従う人の天幕に響く
   主の右の手は御力を示す
   主の右の手は高く上がり
   主の右の手は御力を示す
        (詩編118・13−16)

キリスト教美術に広まった父なる神の最も古い象徴は、雲の中から突き出た手です。古代ローマの地下墓所カタコンベや中世キリスト教会の丸天井に、神の顕現のしるしとして「手」が見られます。

 「ノアの箱舟」
教会は、ノアの箱舟と洪水の出来事(創世記6・9−9・17)に、洗礼による救いの前表を見ました。
復活徹夜祭の典礼の中で、洗礼水の祝福をする時、「ノアの洪水の時、水をあふれさせて、罪の終わりと新しいいのちの始まりである洗礼のかたどりとしてくださいました。」と祈ります。

「この箱舟に乗り込んだ数人、すなわち八人だけが水の中を通って救われました。この水で前もって表された洗礼は、今やイエス・キリストの復活によってあなたがたをも救うのです。」(ペトロの手紙一3・20−21)

箱舟は、神の配慮とノアにもたらされた救済のシンボルとなり、中世の教父たちは、この世を巡礼する教会の象徴と受けとめるようになりました。

 「虹」
神は、40日間の洪水の後、ノアと彼の息子たちに、「産めよ、増えよ、地に満ちよ。」と祝福のことばを投げかけ、契約のしるしとして「虹」を雲の中に置かれます。

「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現れると、わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた契約に心を留める。水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼすことは決してない。」(創世記9・12−15)

「虹」は、「信じるものが一人も滅びないで、永遠の命を得る」ことを望まれる神の慈愛
と恵みのしるしです。

 「星」
洗礼式において、受洗者は、復活のろうそくからともされたろうそくを渡され、「あなたは、キリストの光をもたらす者となりました。主イエス・キリストが来られる時、すべての聖人とともに喜んで主を迎えることができるよう、いつも光の子として歩みなさい。」と呼びかけられます。
「星」の光は、洗礼によって「世の光」とされたキリスト者が、その使命に生きることを表しています。

「とがめられるところのない清い者となり、よこしまな曲がった時代の中で、非のうちどころのない神の子として、世にあって星のように輝き、命の言葉をしっかり保つでしょう。」(フィリピの信徒への手紙2・15−16)

  「あなたがたは世の光である。」(マタイによる福音書5・14)

  「あなたがたは、以前には暗闇でしたが、今は主に結ばれて、光となっています。光の子として歩みなさい。」(エフェソの信徒への手紙5・8)

「星」の中に、ギリシア語の“アルファ”と“オメガ”の二文字が刻まれています。
この二文字は、ギリシア語アルファベットの最初の文字と最後の文字で、一対になって用いられ、「始めと終わり」を意味します。
新約聖書においては、歴史を支配する王である神(黙示録1・18)と救いの完成者である栄光のキリスト(黙示録21・6)を明示するために使用されています。
アルファとオメガの字は、十字架と組み合わせて、教会の壁や祭壇の装飾に、また祭服の飾りによく使われています。


彫刻3「堅信の秘跡」

「堅信とは、神の子とされたキリスト者を聖霊降臨の恵みにあずからせ、洗礼によって新たに生まれた者を勇気あるキリストの使徒とする秘跡です。この堅信の秘跡によって聖霊のたまものが豊かに与えられ特別に力ある者とされます。また、霊魂には消えない霊印(カラクテル)が刻みつけられ、より完全に教会と結ばれ、キリストの復活の証人として、ことばと行いによって福音をのべ伝え、この世界と社会を聖化し、福音化するために働く恵みが与えられます。」
   (「カトリック教会の教え」(カトリック中央協議会)p.188から)

鳩、七本の光線、教会が彫られています。

  「鳩」については、「聖堂案内シリーズその5」を参照してください。

「七本の光線」は、聖霊の七つのたまものを表しています。
堅信式において、司式者は、受堅者に手を差し伸べて、聖霊が豊かに注がれて、聖霊の七つのたまものがあたえられるよう祈ります。
   「全能の神、主イエス・キリストの父よ、
   あなたは水と聖霊によって
   この人々に新しいいのちを与え、
   罪から解放してくださいました。
   今、この人々の上に、助け主である聖霊を送り、
   知恵と理解、判断と勇気、
   神を知る恵み、
   神を愛し敬う恵みをお与えください」

聖霊の七つのたまものとは、
(1)知恵(2)理解(3)判断(4)勇気(5)神を知る恵み(6)神を愛する恵み(7)神を敬う恵み
*以前は、(1)上智(2)聡明(3)賢慮(4)剛毅(5)智識(6)孝愛(7)敬畏
と言っていました。

「教会」は、堅信の秘跡を受けた者が、「キリストの使徒」「キリストの復活の証人」として教会の建設のために奉仕する使命が与えられていることを示唆しています。



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