聖堂案内シリーズその12


パイプオルガン


 


解  説

 世界平和記念聖堂の宝物のひとつは、パイプオルガンです。
 パイプオルガンは、ドイツ・ケルン市から広島市に贈られたものです。
 鍵盤台の右側に銘板があります。


 中央にケルン市と広島市を象徴する紋章が描かれ、右側に「ケルンと廣島 同じ苦しみに 結ばれつ 世界の平和のため 共に働き 共に祈る」と刻まれています。同じことばが、左側にはドイツ語、下部にはラテン語で記されています。

 1951年、当時の広島教区長荻原晃神父が、聖堂建設の協力を呼びかけるために渡欧した際、ケルン市長にパイプオルガン寄贈を打診したところ、翌年ケルン市議会が寄贈を決議し、その時代の日本では貴重なパイプオルガンが世界平和記念聖堂に設置されることになりました。 
 忘れてはいけない大切なことは、このパイプオルガンが、第二次世界大戦によって徹底的に破壊され、広島と同じように戦争の災禍を経験したケルン市から贈られたことです。
ケルン市民の寛大さと善意、苦しみを共にする兄弟への愛を、常に記憶にとどめておく必要があります。
 ケルン市長は市議会に対しての演説で、戦争に対する反省、平和への願い、そして同じ戦災被害に対する同情を強く語りかけたということです。

 パイプオルガンは、聖堂の外陣後部の二階部分に最後部の壁面に接するように設置され、1954年8月6日の献堂式当日には荘厳な音を響かせました。 
 1500本のパイプで、鍵盤二段、音栓(ストップ)十八を有する当時の日本では大パイプオルガンでした。
 1973年に改修工事が施され、パイプ数を3600本とし、鍵盤を二段から五段、音栓(ストップ)も40と増加させ、信者席の方へやや近づける位置に移されました。

 聖堂の天井は当初の計画では、軽量鉄骨を中心にしたものでしたが、音響的にまずいということで桧小節材が使われています。
 音響効果はこの上なく素晴らしく、聖堂内に響きわたるパイプオルガンの音色は、荘厳で繊細かつ華麗で、「天上の音楽」を味わうかのようです。

 1969年6月1日から、パイプオルガンの定期演奏会が始められ、以後ほぼ毎月第一日曜日午後4時より、一般市民にも開放されて行われ続けています。
 2005年2月6日には、第380回パイプオルガン定期演奏会が開かれます。
 演奏会は、多くの人々が世界平和記念聖堂へ足を運ぶ機会となり、聖堂が市民にも開かれたものであることを示し、音楽を通して「平和を祈り、平和のために働く」心を育てる重要な役割を果たしています。

 世界平和記念聖堂で挙げられる結婚式には、パイプオルガンが演奏され、愛と忠実を誓い合った新郎新婦の門出を祝福します。

角笛を吹いて
琴と竪琴を奏でて
太鼓に合わせて踊りながら
弦をかき鳴らし笛を吹いて
シンバルを鳴らし
シンバルを響かせて

神を賛美せよ
神を賛美せよ   
神を賛美せよ
神を賛美せよ
神を賛美せよ
神を賛美せよ

(詩編 150)

 世界平和記念聖堂のパイプオルガンは、妙なる音を響かせながら、神を賛美し、世界の平和を祈り続けています。


2004年12月24日市民クリスマスミサ

※この記事は、「『世界平和記念聖堂 広島に見る村野藤吾の建築』石丸紀興、相模書房」を参考にさせていただきました。



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