聖堂案内シリーズその14


説教壇


解  説
 世界平和記念聖堂の正面祭壇に向って左側の側廊の柱に説教壇があります。
 ラテン語と日本語で献呈の碑文が刻まれてます。

 
EVANGELIZANTES PACEM


MUNCHEN~HIROSHIMA 1956

平和を宣べ伝うミュンヘンー廣島 1956

 教会の典礼には二つの中心があります。
 一つは、犠牲をささげることであり、祭壇が使われます。もう一つは、神のことばが説教壇から告げ知らされることであります。

 説教壇は、初期には聖堂の一番奥に置かれていましたが、11世紀以降は内陣部に置かれるようになりました。(「カトリック大事典」V、研究社、801頁)

 説教壇は、通常、手摺と階段をもち、音響効果をよくするために天蓋がとりつけられています。素材としては、殆ど木か石を用い、形状は普通多角形であり、稀に四角あるいは円形のものがあります。
 聖堂建築の面から見れば、説教壇には次第に装飾性が加えられていき、多彩な彫刻やレリーフがほどこされるようになり、ヨーロッパ各地のゴシック式やバロック式の大聖堂には芸術的に優れたものもつくられました。後期バロック様式においては、説教壇は、手摺と階段がなくなり、床から離れ、柱や壁に貼り付けられたような形もあらわれました。

 世界平和記念聖堂の説教壇は、手摺と階段には簡素で美しい大理石が使われており、天蓋も備えた典型的な構造で、変形の八角形で、壁面には鳩のモザイクが描かれています。
 大変シンプルではありますが、素朴で優美な説教壇です。

 説教は、カトリック教会においては、ミサの「ことばの典礼」の重要な部分で、司式司祭は主日と祭日には、当日の聖書の箇所が朗読された後、必ず説教をすることが義務づけられています。
 第二バチカン公会議の「典礼憲章」では、説教の本質と目的が明確に示されています。
 
  「典礼の暦に従って、聖書に基づいて、信仰の秘義とキリスト教生活の諸原則を説明する説教を、典礼そのものの一部として、大いに奨励する。特に、主日と守るべき祝日に、信徒の参集のもとに行われるミサ聖祭において、説教を重大な理由なしに省略してはならない。」(第二バチカン公会議「典礼憲章」52項)
  「説教は、まず聖書と典礼との泉からくみ取り、救いの歴史、またはキリストの秘義における神のすばらしいわざを告げ知らせることである。この秘義はわれわれのうちに、特に典礼の祭儀のなかに、常に現存し、働いている。」(同上 35項)

 説教者は、聞き手をキリストに出会わせ、キリストの呼びかけに応答するよう招きます。
 
 「説教の目的は、信者がキリストとの一致を深め、喜びと安らぎをもって日々生きるよう信仰を活性化することである。「人はパンだけで生きるものではない。神の口から出る言葉で生きる」(マタイ4・4)とあるように、神の言葉を聴き、それを理解し、味わうことによって、人の心と魂は永遠の命に養われていく。それが「生きる」という言葉の本当の意味にほかならない。」(「カトリック大事典」V、研究社、796頁)

 現在は、典礼の改革により、この説教壇は説教のために使われてはいませんが、ミュンヘン市民から寄せられたメッセージを思い起こして、平和の福音を宣べ伝える努力を続けていきましょう。

 「いかに美しいことか
  山々を行き巡り、良い知らせを伝える者の足は。
  彼は平和を告げ、恵みの良い知らせを伝え
  救いを告げる。」(イザヤ52・7)



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