平和の使徒推進室室長の部屋

イスラエルーパレスチナー日本
             平和をつくる子ども交流プロジェクト Part1


イブラヒム神父と肥塚神父

 2005年8月、被爆60周年を記念する広島・長崎に、長引く紛争の真っ只中に生きるイスラエル・パレスチナ双方の高校生が日本の高校生と共に旅をし、「出会いと対話」を通して平和を学ぶという企画が準備されています。

 @プロジェクトのきっかけ
 教育こそ中東和平実現への道であると確信し、宗教、人種を問わず、イスラエル・パレスチナの子どもたちの教育支援を続けている「聖地のこどもを支える会」は、メディアでは伝えられない中東の現状を多くの人々に直接、より強く訴えるために、2003年秋、キリストの聖誕地ベツレヘムで学校教育に携わるイブラヒム・ファルタス神父を日本に招聘し、各地で講演会を開催しました。同神父は、2002年4月、ベツレヘムで起きた聖誕教会包囲事件の際、同教会の責任者の一人として、逃げ込んできたパレスチナ人とイスラエル軍との間に立ち、話し合いによる解決に尽力した人です。戦車や装甲車に囲まれ、水、電気、ガスなどのライフラインも止められ、食糧も尽きかけた教会内に留まり、想像を絶する過酷な30日を過ごしました。
 同神父は、講演会において、この時の「人のいのちを救うための体験」をつぶさに語り、「平和と和解」のためには「対話」がいかに不可欠であるかを熱心に話し、聴衆に大きな感動と感銘を与えました。
 イブラヒム神父は、広島を訪れた際、平和記念資料館で被爆の悲惨な実情と戦争の愚かさを目の当たりにして、非常に強い衝撃を受けました。同時に、この破壊し尽くされた町が戦後、「平和の発信地」として復興を遂げてきた姿に深く感動し、「この破壊と再生の町―――広島・長崎でこそ、イスラエル・パレスチナの子どもたちに『平和の学び』をさせたい」と考え、その実現を強く望みました。彼は、すでに9年前から、毎年双方の子どもたち数十名を共にイタリアへ連れて行き、「出会いと対話」を実現してきています。

 A「平和の鐘を共に鳴らそう!」
 このイブラヒム神父の熱意にうたれ、その望みに応えようとして「聖地のこどもを支える会」、広島教区、長崎教区が協力して実行委員会が設立されました。
 ここに、イブラヒム神父が、関係各方面に送った手紙の一部を紹介します。紛争地に生きる子どもたちの「平和の学びの旅」を熱望した彼の真意と動機が伺われるからです。
 「・・・広島・長崎は未曾有の悲劇を乗り越えて復興を達成し、希望といのちへの道を探り、切り開いてきました。イスラエル・パレスチナの少年たちが、広島・長崎がたどった平和への歩みから学び、またその力強さにふれることができるよう願っております。彼らにとって、「平和の地」ヒロシマ・ナガサキでの「出会い」が、日々多くの血が流されている「聖地」に平和を実現するための「種」となることを確信しています。そしてこの「種」は日本の少年たちとの交流によって、さらに確かな、実り豊かなものとなるでしょう。彼らは、自然との調和のうちに、全世界の人々とともに平和に生きるという、新しい時代の証人となれるのです。このメッセージは、この少年たちが一緒に平和の鐘を打ち鳴らすことによって、それぞれの民族に強烈に発信されるでしょう。
 これは、若い世代が、平和と再生のシンボルであるヒロシマ・ナガサキと、聖なる都でありながら、いまだ暴力と相互不信のために苦しみ続けるエルサレムの間に「橋」を架ける、またとない素晴らしい機会だと思います。それは中東のすべての国々と国際社会にとって、重要なしるしとなるのではないでしょうか。・・・」

 B「人」と「人」との出会いを求めて
 長年戦争が続いているイスラエル・パレスチナでは「対話」など望むべくもありません。
特に4年前からのインティファダでは、パレスチナ側の自爆攻撃やイスラエル側の軍事行動などにより、双方に、子どもを含む数千人の犠牲者や数万人に及ぶ負傷者が出ており、相手への憎しみや恐怖だけが増幅しています。加えて各地に設けられた検問所、分離の壁によって「対話」の前提である「出会い」すらかなわなくなっています。だから相手の「人間としての顔」が見えないのです。
 紛争の解決のためには、お互いが「人間」であることを肌で感じ合うことが第一歩ではないでしょうか。そうすれば敵対している相手も、毎日、不安と恐怖、困窮の中で、平和だけを望んでいる普通の人々であることを知ることができるのです。
 ですから、イスラエル・パレスチナの若者たちが、日本への二週間の旅を共にしながら、目と目を合わせて対話をし、互いの苦しみをぶつけ合い、将来への夢と希望を語り合うことができれば、「平和と和解への道」を共に歩むための具体的な方向性が見えてくるのではないでしょうか。


イブラヒム神父と来日メンバー

 C「いのちへの道」と「死への道」:ヒロシマ・ナガサキでの学び
 また、戦争の体験がない日本の高校生たちにとっても、暴力の応酬が絶えず、多くの血が流されている国で、自由と尊厳と安全に渇いている若者たちと直接触れ合い、出会うことは、重要な意味を持つにちがいありません。
 さらに、イスラエル・パレスチナ・日本の高校生たちが、共に広島・長崎で「戦争と破壊の恐ろしさ」の極限を目撃することで、争い合うことがいかに愚かしく、「死への道」でしかないことを理解するでしょう。そして互いを尊重し対話することで、「いのちへの希望の道」が開けてくることを学び取ってくれるでしょう。
 次の世代に紛争を続けるのも若者たち、平和のために働くのも若者たちです。このプロジェクトに参加する若者たちが、「平和のために自分は何ができるのか」を具体的に考え、行動に移せる人になるよう願っています。旅の間に育まれる相互の友情が、それぞれの心に蒔かれる「平和と和解の種」をより力強く成長させてくれることを期待しています。彼らが未来への希望の道を見出し、聖地に、そして世界に平和を実現するために、互いに手を取り合って働く「平和の使徒」となることを心から望んでいます。

プロジェクト日程
 7月30日(土)成田着〜東京
 7月31日(日)〜8月1日(月)東京 ワークショップ
 8月2日(火)広島へ
 8月3日(水)〜8月6日(土)広島体験学習
 8月7日(日)長崎へ
 8月8日(月)〜8月10日(水)長崎体験学習
 8月11日(木)成田へ 帰国の途へ 
 
 尚、このプロジェクトを支援するためのチャリティーコンサートが開かれます。
  
 と き   7月16日(土)午後6時
 ところ   世界平和記念聖堂(カトリック幟町教会)


チャリティコンサートポスター

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