2.11「建国記念の日」を問う広島集会

 一人目は「徳島県教組襲撃事件」の被害者である冨田真由美さん(徳島県教職員組合元書記長)に、『ヘイトクライムに負けない共生の教育を拓く』と題して話していただいた。この事件は2010年4月14日、「在日特権を許さない市民の会(在特会)」会員らが県教組事務所に押し入って暴言を吐くなどし、撮影した動画をインターネット上に公開したというものである。在特会員らの動機は、徳島県教組が四国朝鮮初中級学校(松山市)に寄付したことに抗議するためと言っているが、事務所内での行為はその被害者に恐怖を感じさせるものであった。その様子は集会が行われた会場内で動画によって視聴された。それを見れば、冨田さんがどれほどの精神的苦痛を強いられたか、またその後も事件による後遺症PTSDに苦しみ続けられたということがよく伝わった。その後、冨田さんは「差別発言の責任が問われない社会は放置できない」という思いのもと、PTSDに苦しみながらも6年半の間、訴訟を闘ってこられた。そして2016年4月25日、ついに高松地裁は在特会の一連の行為を「違法性は強く、人種差別的思想の発現にほかならない」と結論づけ、勝訴を勝ち取ることができた。冨田さんの話は、ヘイトスピーチがどれほど人権侵害になるかということを多くの参加者たちに痛烈に感じさせるものであった。

 二人目は広島朝鮮初中高級学校長の金英雄先生に、朝鮮学校無償化不指定取消請求訴訟の経過について話していただいた。金先生はまず祖国解放後の広島における民族学校の歴史を語られた。厳しい差別の現実が多く話されたが、そんなの中で日本社会に粘り強く働きかけ、日本人学校の生徒たちとの交流が徐々に進んできたことが話された。今では高等学校吹奏楽連盟、高野連、高体連にも加盟が認められ、日本人の高校生とともに、クラブ活動もできるようになっている。しかし一方でまだまだ民族学校を守っていくことが困難な現状があり、広島朝鮮学校無償化裁判の経過について報告された。日本政府は、2010年度から始めた高校の授業料無償化(現在は「高等学校就学支援金制度」)について、朝鮮学校を対象外にした。それに連動するかのように各地の自治体もまた補助金をカットしていった。そんな中、民族学校の生徒や卒業生たちは2013年、学習権の侵害にあたるとして、無償化の適用などを国に求める訴訟を起こしている。原告の一人である金先生も、この訴訟を通して、日本で暮らす朝鮮にルーツをもつ高校生が外交問題に左右されることなく当たり前に教育を受けることができること、そして日本社会がより豊かな多文化共生社会に近づくことを求めて、広く市民に呼びかけている。最後に「ぜひ朝鮮学校に来て、どんな教育を行っているか知ってほしい」、また「生徒たちと交流してほしい」と呼びかけられた。金先生の話は、民族学校の置かれている状況を再認識させ、日本社会の排外主義を感じられるものであった。

 二人の講演の後、広島朝鮮学校無償化裁判・原告側弁護団長の足立修一さんから広島地裁でのやり取りの経過が報告され、集会を終えた。カトリック、プロテスタント、一般市民ら約60名が参加し、来年もこの集会を継続していくことを確認して閉会した。

(文責 カトリック正義と平和広島協議会 神垣 栄)

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